「はすに向く家(諏訪市)」竣工(林建築設計室、長野県)

【今週のコラム548 林 隆】 長野県諏訪市に建つこの家は、住宅と車庫の二棟からなり、設計期間10ヶ月、工事期間7ヶ月を経て12月15日に竣工引き渡しになりました。

現在南隣地は空地ですが、将来家が建つことが予想されます。敷地の西側には小さな川が流れその河川敷きの土手は、敷地より2mくらい高くなっています。土手を歩く人から見下ろされるような敷地なのですが、川の反対側には遠くの山並みを望むことができます。

そのような敷地条件の中で、敷地の使い方と建物の配置について検討を重ねることにより、南西方向に開くことが最も重要である事がわかってきました。主要な部屋が南西方向に向くことにより、①南隣地に家が建っても室内はいい環境が保たれる ②土手を歩く人と視線が合わない ③2階リビングから最も綺麗な景色が見える、というメリットがあります。

四角い建物を45度斜めに配置すると、敷地の四隅に使いにくい外部空間が残ってしまいます。そこで建物は方位と敷地形状に対して素直に据え、プラン的には45度ふれている間取りが生まれました。

家の中央を貫く斜めの壁を設け、その壁に沿って各居場所が斜め(はす)に向いて構えています。南西方向の「眺望の方向性」と「壁の角度」、このふたつの軸線は一致していて、偶然にも諏訪大社上社に向いているのです。

象徴的な斜めの壁を活かした有機的な動線計画により、階段を上がり2階に立った瞬間、目の前には自慢の景色が飛び込んで来るドラマチックな演出をしています。平面的に斜めの壁が存在することにより、2階の屋根を支える木造の化粧タルキは、1本1本すべての長さが異なり、外周部に接する部分の高さと角度が皆違うという大変複雑な納まりでしたが、大工さんをはじめ職人さんたちが丁寧に造ってくれまして、まさに構造美が表現されています。

建築主さんの想いがいっぱい込められた家が竣工しました。ここでどんな暮らしが始まるのか、建築主Kさん、またの機会に聞かせてくださいね。施工会社のKさんとIさん、そして工事に携わっていただいた多くの皆様方、お世話になりまして本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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