家をつくり、薪ストーブを導入するケースがよくあります。どうしてこの暑い夏に薪ストーブの話なの?ということになりますが、お伝えしたい事があります。長文になりますが、ぜひお付き合いください。
住宅のプラン、生活スタイル、家族構成、薪の調達方法などによって、「薪ストーブ」の位置づけも変わってきます。そこで大きなポイントは2点。
ひとつは、暖房器具として主暖房と考えるか(薪ストーブのみ)、薪ストーブはサブ的に考えて他の暖房設備と併用するかどうかの選択。長野県のような寒冷地でも、建物の断熱性能を上げることによって両方のパターンが可能になります。
もうひとつは、既製品(多くのメーカーが製品化しています)でいくか、オーダーメイドの薪ストーブにするかという選択。既製品でもオーダーメードでも、主暖房になり得ます。
「オーダーメイドの薪ストーブ」というと特殊なケースのように思われるかもしれませんが、林建築設計室では、今までに18軒の住宅での実例があります。機能とデザインの両面から検討しますので、その結果、個性的なオンリーワンのストーブが誕生します。
ストーブ工房・山林舎の児玉新時さんと連携して、住宅のプランの段階から打合せを重ね、その空間にふさわしいデザインを求めてきました。ここで実例写真を紹介させていただきますね。
風の流れる家(上田市)
第1号です。 居間と食堂のまん中に、ストーブと階段を配置。
高原の風が吹抜ける家(茅野市)
大自然を背景に、オブジェのように。
見える家(東御市)
玄関からも、居間からも、食堂からも、階段からも炎が見えます。
望む大屋根(箕輪町)
コンクリートの壁と融合したデザイン。蓄熱効果もあります。
場所に合わせて変形した形状。真下に薪を置きます。
炉壁を包む大屋根(辰野町)
浮いたイメージ。脚がなくなりました。
階層の家(松本市)
正面と背後の2面がガラス、このパターンが一番多いです。
突然のことですが、長い間いっしょに家づくりをさせていただいた児玉新時さんが、病気療養中のところお亡くなりになりました。残念でなりません。何回も工房へお邪魔しました。何回もうちの事務所へ来てくださいました。何回も工事現場でお会いしました。入院中の病室では本当にお元気でしたので、またお仕事に復帰されると信じていました。先日お手紙をいただきましたのでお伺いしようと思っていたところでした。
児玉さんは、いつも話が長くて止まりませんでしたね。大きな方針からディティールに至るまで、炎の気持ちになってストーブを設計し製作されましたね。そして建築家が何をしたいのかを常に感じ取ってくださいました。無理な相談やお願いをすればするほど、テンションが上がってきて時間を忘れて熱い議論になりました。何もないところから創造していく”ものづくり”の楽しさと大変さについて、私も児玉さんから教えていただき、励まされもしました。本当にありがとうございました。創っていただいたストーブは、クライアントさんの暮らしをずっとずっと暖かく守ってくれることと思います。
このブログを書きながら、携帯電話番号の登録をはずしました。児玉さんゆっく休んでください。ここに謹んでご冥福をお祈り致します。後継者の竹内さんと新しいプロジェクトもはじまっています。今までお世話になったクライアントさんのメンテナンスも含め、山林舎さん引き続きよろしくお願い致します。(林 隆)